平成18年6月定例会(第4日目)

2006年7月3日

質問内容

今後のまちづくりにおける新交通システムについて考える

◯20番(佐地茂人君) それでは、通告に従いまして、大きく2点について質問をさせていただきます。
第1点目は、新交通システムについてであります。
昔から子供はバスや電車、新幹線が通ると、うれしそうに指を差し「バス、バス」とか「電車」と言って言葉を覚えていきます。我が子も同じように育ち、最近では私の視察に出かける際には、ついていくといってだだをこねて苦労します。子供は乗り物が大好きです。乗ることだけでわくわくどきどきします。日常の生活の中で、時間と戦う大人社会での乗り物に対しての意識とはほど遠く、うらやましくも思えます。
新交通システムの活用により、海上を電車を乗せたフェリーが走り、三保まで通じるとか、道路を通らずに、空からロープウェイで通行する乗り物の時代が来るのでありましょうか。実現すれば子供はなお一層喜んでくれるとは思います。
さて、今回の新交通システムについての質問は、このような夢のある話とは少し離れて、実現に向けての取り組みがどの程度進んでいるのかをお聞きしたいのであります。
合併前の総合計画、新市建設計画、指定都市静岡での第1次総合計画、または新都市計画マスタープラン、静岡市総合交通計画等、新交通システムに関係しそうな計画はたくさんあるわけですが、ここ数年で、現在までの静岡市での取り組みは、中距離軌道導入可能性調査が平成15年度に行われたきりで、具体的な検討にまで踏みこんではいないと理解しています。
地方都市における新交通システムを考えるに当たって、従前から言われてきたこととして、初めに不採算路線の問題があります。これは東京の山手線のように、幾つかの副都心を結べるような交通需要がない地方都市にとって、採算のとれる路線は都心と郊外の一方向の路線であり、しかもそれが放射線状に形成され、交通量も朝晩がピークで、昼間は利用者が極端に少なく、採算がとれないことが導入のネックになっていること、2つ目として設備、人員の問題であります。幾ら昼間ががらがらでも、ピークに合わせて設備や人員を確保せざるを得ず、これも導入の大きなネックとなります。
3つ目としては、事業者の問題です。
新交通システムを経営する事業者が見つかるかということと、現在の都市交通を担っている事業者への経営圧迫ということです。一般的に長期間にわたって赤字経営が見込まれ、しかも公共交通料金は低廉でなければならないという不思議なルールがある我が国では、なかなかこの事業に新規参入するものはあらわれない。公共団体が赤字覚悟で乗り出すほど、市民意識が得られるとも思われないわけであります。
したがいまして、本市における新交通システムを検討するに当たっても、以上述べたような課題をクリアするか、全く新しい発想のもとにこれを考えなければならないこととなります。例えば、都心空洞化解消策として、自動車乗り入れ禁止のかわりに新交通を入れるとか、環境問題や高齢化を考え、採算性とは別の次元で導入するとかであります。
このような状況の中で、最近、静岡にもLRTを走らせる会が発足し、2月10日には国の路面電車導入ガイダンスについてを検討し、また地元運輸事業者との意見交換と県行政とも話し合いがなされたとのことであります。4月7日には、同会はLRT導入計画の検討を進め、市民への情報提供についても行っていくと新聞報道されています。電車が好きな方々を中心に電車のデザインを発表したりと、徐々に熱を帯び、静岡市に電車を走らせたいという気持ちを持つ人がふえ、少しずつではありますが、影響力を持ってきているように感じております。
清水地区についても、LRTで結ぶ会という市民団体のグループが結成され、昨日には総会が開催され、活動を進めているようであります。
新交通システムの実現には、このような市民グループとの協働により、課題を1つずつクリアしていくことが重要であると感じます。ところが、現在の静岡市では、導入の是非の判断はもとより、新交通システムを考える新しい視野からの論点整理を行っていないのではないでしょうか。市民グループとの距離を置くのではなく、ともにテーブルに着いて共通の課題を見出していってもいいのではないでしょうか。
そこでお伺いいたしますが、静岡、清水の両地区でLRT推進の市民グループが活動をしていますが、これらのグループと市のかかわり合いはどのようになっているのかお答えください。
新交通システムについて検討する今日的意義として、私は4点ほどあると考えています。
1つ目としては、自動車交通の行き詰まり対策と渋滞対策、2つ目には環境対策で、特に地球温暖化防止対策、3つ目に高齢者と障害者対策、4つ目に中心市街地活性化対策があります。現在では、バブル時代のスクラップ・アンド・ビルドから変化し、お金がかかる地下鉄ではなく、エレベーターがあっても乗車するために困難なモノレールでもなく、また土地の獲得が困難で高齢化に適していないものではだめであり、市の財政や社会情勢の変化に対応をしたものでなければなりません。
また、これからの新交通システムは、利用と運搬能力のギャップがあるものは適していません。
そこで、空気だけを運搬するのではなく、予測した乗客運搬能力に柔軟に適し、景観をも生かすには、LRTが現在のところ一番よいのではないかと私は考えます。これからは人が減る時代であり、高齢化が進みます。生活道路以外の主要幹線道路に関しては、新計画についてはここ10年で一段落すると考えます。
民間業者の車の製造については、日本向けのトラックは減少計画が既に進み、自家用車については環境に配慮した車が主流となり、台数も総人口の減少に伴い、いずれ減少するのではないかと考えます。
10年後、今以上に東京圏に人口が集中するのではなく、静岡市がまちとして魅力を保持し続け、定住人口と交流人口が減らないまちであるためにも、文化的な静岡市に見合った公共交通は必要であります。環境や財政面では、LRTとバスをうまく融合させていくことが求められます。
平成16年3月のPT、パーソントリップ調査報告をもとに、現在、計画実施中のオムニバスタウン計画やバス・アンド・ライド、サイク・アンド・ライド、PTPS、公共車両優先システムとの連携の上、今以上に市民の移動を便利にするには、どこの箇所にLRTが必要なのか、バスの利用者が電車にかわるだけでは意味がありません。現在のバス路線は、駅に向かう放射線状になっており、目的地に行くには、一度駅に行かなければいけないことをカバーすることも踏まえてほしいと思います。
このような放射線状交通を横断的につなぐ軌道系交通とバス、自家用車の組み合わせが本市にはふさわしいと感じます。
また、持論ではありますが、LRTの路線には2種類の利用があると考えます。1つは、市民の生活するための足であり、市街地と地域を結ぶための路線、もう一つは、観光地としての路線であります。つまり、市外から来る人や車で来る客、またはお年寄りが中心地や観光スポットを行きやすくするための路線も必要ではないかと思うのです。県都静岡として街中が発展しないと魅力がないところも考慮に入れてほしいと思いますし、中心市街地では、現在のコミュニティーバス以外のルートがよいのではないかと思います。
このように、静岡市としても是非を気にするのではなく、まず新交通システムを活用し、どのようなまちになりたいのかを市民にわかりやすく理念を示す、どの種類の交通システムがふさわしいのか、そしてどの場所に活用することが静岡市を生かせるのかを早急に決定していただきたく思います。
本市は、今後のまちづくりにおける新交通システムをどのように考えていますか、お尋ねします。
中距離軌道導入可能性等検討基礎調査では、都市形成、また都市交通、社会的行政の3つの観点から現状と課題を抽出し、方向性を探る調査を行っています。これらは、全般的なさまざまな方向からの可能性調査であります。将来需要からの検討についても、人口動向と移動を中心にケース設定を行っています。これでは一般的過ぎであり、静岡市が魅力あるまちとして形成するための設置根拠にはなりにくいのではないかと思いますし、どの箇所に新交通がふさわしいのか、バスとの需要についても疑問視されます。さらなる分野ごとの調査を行ってほしいと思います。
また、中距離だけでなく、広域的な可能性も必要であると考えます。詳細なバス利用調査や人の移動の把握、採算が合う路線と合わない路線の決定、合わない場合はバスで対応するなど、数字の見込みを予測調査してほしいと思います。
まず、どこに設置したいのかという考え方が必要であると思いますが、その後のルートを検討するための調査を市民に公表してからでなければ、市民意識の向上が急激に上がるとは思われません。
そこでお伺いいたしますが、今後の取り組みはどのように考えていますか、お答えください。
次に、大きく2点目の市街地での集会所建設についてお伺いいたします。
国の歳出削減の話を考えると、いよいよ国は本気で地方自治体にむちを打つ政策を強化するようであります。どうしても国の財政健全化を先にやりたいということは、小泉首相が旧大蔵省の族議員であるからでしょうか。これを受け、地方は闘いを受ける気持ちで臨まなければなりません。地方交付税の減少など、一般財源がかなりきつくなることを考えると、我々静岡市は、金がないなら労力で賄うしかないと思います。指定都市静岡が活発に交流し、価値をつくり合う自立都市になるためには、広大な市域を持つ静岡市にとっては、地域ごとのコミュニケーションを維持し、地域の特徴を尊重し、地域の集合体が静岡市をつくるようになるべきであります。この地域の労力と市との協働作業がまちをつくることは言うまでもありません。
今回は、この地域のコミュニティーを維持し、強化するための集会所について質問をいたします。
私が望むことは2007年問題にもありますが、第2の人生を地域で社会貢献をしていただきたいことがあります。例えば、自治会、町内会という小規模の組織で地域の高齢者の生き生き活動や子育てサロン的なものを運営できるようになること、いずれはNPO組織として地域で福祉等が賄えることが財政的にも有効であり、何よりも自分たちのまちを自分たちでつくることにつながり、自立した市民が育つのではないでしょうか。自治会、町内会の集会所は、この作業を行うための中心的な役割を担います。
現在は、静岡市集会所建設費補助金制度が定着し、平成17年度は2億2,600万円、昨年は清水地区でかなりの申請があり、平成18年度は2億1,900万円という大きな規模の予算が計上されました。このことについては、大変にありがたいことであります。
市街地を中心とした町内会の集会所についてお話しさせていただきますと、南町稲川地区では4町内の1,421世帯で1つの集会所を活用しています。大和、八幡地区では5町内で1,297世帯で1つの集会所、八幡3町では1,610世帯で1つの集会所と町内単独では地価が高く、土地を用意に購入できずに補助金をうまく活用できず、本当は単一町内会で集会所を運営したいにもかかわらず、かなりの人口で集会所を運営している現実があります。これでは、きめ細かな地域ごとのまちづくりも困難ではないでしょうか。
また、石田地区においては、市の土地を借りて集会所を建てていましたが、市の開発により、集会所がやむなくなくなってしまった例もあります。土地の高度利用ということで、3階に集会所が存在しますが、エレベーターがなく、高齢者はとてもたどり着けないという様子も見受けられます。
このような状況は、他の地区の中心市街地近辺でも多くあるのではないかと思います。
そこでお伺いをいたしますが、市街地での自治会等の集会所が、地価の価格等の原因により建設されにくい状況にあるのではないかと思いますが、現状をどのように考えていますか、お答えください。
私は、この助成制度は土地を持っていることが前提の制度であることにより、中心市街地周辺は新設することが困難であると考えます。
合併以前の清水市においては、土地を購入するための利子補給制度がありました。すり合わせのとき、これは使えると感じましたが、旧静岡市の7割補助に統一され、なくなってしまった経緯があります。
中心地の地区でも、静岡市集会所建設費補助金の活用をしやすくすることや、公共用地内での建設や公共施設の柔軟な活用など、利用ができる形を望みます。このままでいいことはないと皆さんも感じていることでしょう。
お伺いをいたしますが、自治会等の集会所建設に係る用地取得に対する助成制度が考えられないでしょうか、お尋ねいたします。
以上で1回目の質問を終了します。

68 : ◯都市局長(石上義之君)
◯都市局長(石上義之君) 新交通システムに関する3点の御質問にお答えをいたします。
1点目でございます。
LRT推進の市民グループと市のかかわりでのお尋ねでございます。
現在、旧静岡及び旧清水地区にそれぞれ1団体が組織され、LRT導入における事例や課題等についての研究活動が行われております。研究会が開かれるときには、その内容について今後の参考とするため、担当職員が傍聴をさせていただいております。
2点目でございます。
今後のまちづくりにおける新交通システムの考え方でございます。本市では、静岡市総合交通計画におきまして、自動車に過度に依存せず、地域のニーズに応じて公共交通や自転車でより快適に移動できる、総合交通体系を目指しております。
新交通システムにつきましては、鉄道とバスの中間の輸送能力を持ち、環境対策や交通渋滞の解消、高齢社会に対応した交通手段でございますので、将来の交通体系やまちづくりを検討する上で、重要な都市施設の1つであると考えております。
3点目でございます。今後の取り組みに対するお尋ねでございます。
本市が今後さらに発展していくためには、活発な都市活動を支える総合的な交通システムの構築が必要であると考えております。これまでに新交通システムの必要性や導入可能性などの基礎調査を実施してまいりましたが、本市にとって将来のまちづくりの姿を描く上で、どのような交通システムがふさわしいのかも含めて、今後引き続き調査研究を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
69 : ◯市民環境局長(河野正也君)
◯市民環境局長(河野正也君) お答えいたします。
まず初めに、市街地の自治会等の集会所が建設されにくい状況にあると思うが、現状をどのように考えているかとの御質問でございますが、市街地に所在する自治会町内会は、加入世帯数等小規模な団体も多く、集会には市の公民館や周辺の学校管理施設などを利用していることから、集会所の建設に関する相談は比較的少ないのが現状でございます。
次に、自治会等の集会所建設に係る用地取得に対する助成制度は考えられないかとの御質問でございますが、本市におきましては、静岡市集会所建設費補助金交付要綱に基づき、自治会町内会の集会所建設に対し、対象事業費の70%以内を補助できるようになっております。この補助率は全国的に見ても非常に高いものとなっており、御指摘のような用地取得に係る新たな助成については考えておりません。
以上でございます。
〔20番佐地茂人君登壇〕
70 : ◯20番(佐地茂人君)
◯20番(佐地茂人君) それでは、まず2回目は意見、要望を申し上げます。
まず、新交通システムについてであります。多くの問題があることは十分承知していますが、あえて私の理想論を申し上げたいと思います。
国のLRT導入計画ガイダンスをもとに、早期の静岡市導入ガイダンスを作成し、ルートの設定など、市民意識の向上となる話を進めていただきたい。個人的には、先ほども申し上げたとおり、LRTが有効であると感じています。
静岡県では、LRTとDMV、ディアル・モード・ビーグルについて調査研究を行っていますが、低コストではあるようですが、DMVの運搬人数、時間、バスとの相違点などを考えますと、DMVは今のところ本市には余り適していないように感じています。
静岡市でLRTを走らせるのであれば、まずJR清水駅からエスパルスドリームプラザまでは欲しいと思います。また、藤枝からJR静岡駅までの直通ラインで15分で行き来できるラインも大変に魅力があります。
草薙駅と葵区の東部地区を南北に結ぶラインも新しい人の行き来ができておもしろいと思います。
静岡駅の中心地を南北に通り、観光地を結ぶラインや市民の足となる環状線も魅力的です。
新たな区として出発した駿河区の一体感を出すためにも、またバス路線の少なさをカバーするために、拠点を結ぶラインでは、静岡駅から南に道路幅が比較的広い日出町高松線に線路を引き、区役所までを結び、登呂遺跡、競輪場、病院、保健所などを結びつけ、東静岡までのコの字型ラインは大変有効であると考えます。
あわせて、長田地区から区役所までの東西を結ぶバス路線があれば、区内に住む市民の一体感が出るのではないでしょうか。
さらに、静岡鉄道の新静岡駅と新清水駅が高速で15分程度で通行可能になれば便利になり、3つの核を身近に感じることができると考えます。地元運輸事業者の意向も踏まえ、いずれにしても、市民意識が向上できる新交通システムの取り組みをお願いいたします。
次に、市街地での集会所建設についてであります。
市民の要望では、1町内1集会所1公園ということがよく聞かれます。市長も現在、タウンミーティングを行っているので御承知であると思いますが、より強い地域意識や市民の自立のためにも、ぜひとも町内1集会所の実現に向け、市街地への土地対策を講じてくださるようお願いいたします。
あわせて、公共の土地や施設を町内会や自治会が利用しやすくなるような方法をお考えいただきたいと思います。町中もお忘れなくいただきたいということをあわせてお願いをして、以上で質問を終了します。